思秋期 (10月24日)
参道に薄紫や濃い紫色の花が咲いています。
ほととぎす・・・なんと小粋な名前でしょう。
この野趣味溢れる ほととぎす の花言葉は、
夏の終わりから10月末頃まで長く咲いていることで
「永遠にあなたのもの」「秘めた意志」となり、
その花の名は鳥の杜鵑(ほととぎす)の胸の模様に
似ていることから名付けられました。
「ほととぎす」と言うとまず思い浮かぶのが
鳴かぬなら殺してしまへ時鳥 織田右府(織田信長)
鳴かずとも鳴かして見せう杜鵑 豊 太 閤(豊臣秀吉)
鳴かぬなら鳴くまで待つよ郭公 大権現様(徳川家康)
時鳥・杜鵑・郭公は皆ホトトギスと読みますが、上記の句は、いかにも
3人の武将の性格を的確に言い表したものとして、よく知られています。
これらの句は、松浦静山著「甲子夜話・五十三」に出てくるもので、
「人から聞いた話」として紹介しているので作者は不詳のようです。
ちなみに経営の神様といわれる松下幸之助は
「鳴かぬならそれもまたよしホトトギス」と読んでいます。
また徳富蘆花の小説で「不如帰」(これもホトトギスと読みますね)では
悲しい物語が綴られ、実在の人物がモデルになっています。
小説に登場する、主人公に非情な扱いをする継母を「実像」、と思い込んだ
読者の中には、その女性に誹謗中傷の言葉を記した投書をする人もいて、
彼女は生涯苦しんだそうです。
しかし実際は小説とは全く逆の女性だったと言われています。
当時はもとより、遥か昔から現在に至るまで、今ならマスコミやネットなどで
事実が曲げられて伝えられたり、風評被害を蒙る人々が絶えないことも
悲しく怖いことだと思う今日この頃・・。
お寺に咲く《ほととぎす》の花を見ながら、そんな事を思い巡らせています。
秋の夜長、ちょっとネットから離れてじっくり本と向き合うのも、
また一興なのでは?